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::つれづれなるままの小説もどき①
この世界は確かに絶望するはずだった
01. 無自覚の救済
02. 「元」死にたがりや
03. さいごの言葉を覚えていてね
04. 瞼の向こうに光が見えた
05. きみが何を変えてくれたのか知っている?

02



手首の傷がうずく。
左手首に無数とあるそれは、誰かによって意図的につけられたものでも、事故でついたものでもない。
自分でやったのだ。
それは哀れみを生むだけの産物にとどまり、変色した産物は増えるでも減るでもなく私の手首に居座っている。
別に自身を殺めようと本気で思っていなかった。
ただ、人に構ってもらいたい気持ちが強かったのかも知れない。
辛いことがなかったといえば嘘になるが、きっとその辛いことは皆背負っているのだろうと。最近になってようやく思えるようになった。

「それ以上、増やしてはだめだよ」

そういって、私の行為を止めてくれる人が現れて以来、私はそれを生み出すことはしなくなり、卑屈な考えも控えるようになった。

彼女は私よりも一つ年が上で綺麗な人だった。
顔立ちもそうだが、人間として綺麗な人だった。
全てを許し、認めるような器量の大きい人で、やんわりと包み込んでくれる包容力のある人。
自分が男なら完全にこの人に惚れていただろう。いや、男でなくとも、この人の綺麗さに誰もが惚れ込む。
いまのすれた世の中でここまで綺麗な人は希な存在だと、私は彼女を神格化して見ていた。



ある時彼女は言った。

「自分を誰よりも愛してくれるのは、この世でたった一人しかいないんだよ」
「誰よりも自分を優しくしてくれるのもたった一人」

彼女は慈悲深い笑みで私の頭を撫でてくれた。
掌があまりにも温かく、この人は本当に神様の化身か何かなのではないかと見間違うほど

「それは自分自身なんだよ」

彼女は優しく、美しかった。



「何故貴女はそこまで人に優しくできるのですか?」

うずく傷をさすりながら彼女に問う。
ずっと前からの疑問だった。彼女が何故ここまで人に優しく、人を許せるのかが。
どうやれば彼女のような人間になれるのだろうか、どんな環境で育ったのか。
ずっとずっと知りたかった。
私は、彼女になりたかったのだ。
その旨もきちんと伝えると、慈悲の微笑みは憂いを含むものと変わった。

「私なんかのような人間に、あこがれの念など抱かないで…」

弱々しい声で答えられ、私は焦った。
大切な人の地雷を踏んでしまったのかと非常に困惑した。
そんな私に気づいたのか、彼女は無理矢理笑顔を作って見せた。

「ごめんね」

謝るべきものはこちらなのに。
彼女は、どこまで優しい。
いつの間にか涙を目に浮かべた私を、彼女がまた温かく包んでくれた。

×××

彼女の体には無数のひっかき傷と青あざが存在した。
だが彼女はほかの誰にもそれを見せようとはしなかった。
彼女は恐れていた。
また誰かに傷つけられるのではないかと。
そしてまた誰かを傷つけてしまうのではないかと。

彼女は美しいが故に、常人よりも多くの妬みを初めとした憎悪を受けた人物だった。
それらに耐えていた彼女だったが、グラスから水がこぼれるように、彼女の器からもあふれてしまった。

彼女の腕には傷やあざのほかに、別のものが存在する。
それは、彼女の戒めとなっているもので、人を裁くことを許された人物がつけた番号だった。
彼女は誰よりも死を望んだが、裁く人はそれを許さず彼女に死よりも辛い生を与えた。

×××

「死をも許されることのない私には、全てを受け入れるなんて簡単なことだったんだよ…」

もう二度と、踏みしめることのできない外の世界を見つめながら
彼女はいつもの優しい笑みを浮かべて呟いた。



(皮肉なことに、誰よりも優しい人は誰よりも傷を負った人だった)



≫「元」死にたがりや
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