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::気まぐれ文字並べ・5題「さがしても」④
さがしても 配布元:BIRDMAN

さ 燦々と輝く太陽の下でまっすぐに咲く向日葵のように
が がんばるだけが、すべてじゃない。
し 信じることなかれ
て 手紙でしか思いを届けられない私
も もういちどの奇跡




 家族に宛てた手紙を書くのは、これが最初で最後になるはずだ。
妻、娘、息子達に宛てたそれは、10ページ以上にも及ぶ。
1ページ1ページ端から端まで気味が悪いくらい文字が並ぶのを見て、未練がましいと思った。

もう決意したはずなのに。

頭の中で繰り返されるその言葉に、優柔不断なのは血の所為かと自嘲した。
次男も優柔不断で、未だ職に就けないでいる。
子どもは親の駄目なところばかり似てしまうから困る。
ごちようにも、共感してくれる人間は辺りになく、それらは全て風にながれてしまった。

「だから…、子どもという存在は、何よりも愛しいと感じるのかもしれない」

自分の血と、愛する妻の血を分け合った己が分身。
どことなく似通っているその存在に、幾度愛しさを感じたことか。
数え切れない。

「いつまでも、ずっと…、愛している」

そう、手紙にも書いた。数え切れないほど、書いた。
愛のささやき。
常日頃からこんな言葉は言えない。照れくさくて、言えやしない。
この気持ちが愛する家族に届いているなんて分からないが、どうかと願うほど、伝わっていてくれと思うのは、私のエゴなのかもしれない。

そろそろ、いこうか。

「愛しているから、」

天井から垂らされたロープに、私は身を委ねた。

×

「母さん」

この家族で“父親”の存在に当たる男が、今朝逝った。
首つり自殺だった。
発見したのは僕だ。僕はその男の死を確認すると、まっさきに母のもとへ向かった。

「どうしたの」

母はいつも通り、朝ご飯を作っていた。
僕の嬉々とした声色に気づいたのか、注視していたまな板から僕へと視線を移した。

「父さんが逝ったよ」
「そう、だからそんなに笑顔なのね」

母は僕の言葉を聞いた途端、笑顔になった。
次々と目を覚ましてダイニングへやってくる姉と兄にもあの男のことを話すと、僕たちと同じ反応をした。

「これでやっと地獄の借金生活から逃れることができるのね」
「そうだな。あいつからの暴力だって受けなくて済むんだ」
「小言を言われる毎日も今日でさよならだ」

僕ら仲良し三兄弟はいつものように意見が一致し、大いに喜んだ。
そこに母が笑顔で諭す。

「貴方たち、喜んでもいられないわ。
これからの一週間葬式やらなにやらで忙しいのよ。それに、悲しむような演技でもしないと…、世間体に気を配りなさい。
怪しまれないように警察も呼ばなきゃね」

僕たち家族はこれからの毎日平和に過ごせそうだ。
あの男がいってくれて本当に良かった。
未だ天井からつるされてる肉塊に、今だから言える言葉がある。

「ありがとう」



   (この世は、言葉にしないと伝わらないことばかりだ)



≫手紙でしか思いを届けられない私
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