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::クリアしたいお題その④・十分の六の半分
恋のはじまりを告げた夏の陽射

01 恋のはじまりを告げた夏の陽射
02 じれったくて、たまらない。
03 シューティングスターハッピー
04 見上げれば、誓った夢
05 青空の未来
06 心を揺らす青春時代
07 愛を嘆く雨
08 誰にもゆずらない未来の道標
09 オレンジ色の記憶
10 いいことがやまない



恋の始まりを告げた夏の陽射 09-2



 Min-ne*singerのブラックポプラ。
それが僕の携帯電話の着信音だ。そして、それを鳴らすのはただ一人。

「もしもし」
「もしもし、私。十分だけ、付き合って」
「OK」

 あれからというもの、僕と彼女のやりとりは続いている。
彼女と友だちになろうと言い出したのは僕の方だったから、彼女の電話を着信拒否にすることもできず、今に至る。
けれど、そんな気持ちにさせない魅力を彼女は持っていた。
 いじめを受けていると告白された時はどうしようかと戸惑った。
実は僕にもいじめを受けた経験がある。だから友だちを作ろうとはしないで、今でも人を寄せ付けない癖ができてしまっている。人と話すこと自体が億劫と感じている気があるのだ。
そんな僕と彼女が良好な人間関係を築けるかなんて、考えるまでもなかっただろう。

だが、彼女は僕とは違っていた。

 僕から見て、彼女にはいじめられる原因が見当たらない。
声は聞いていて心地よいものだし、話の内容もつまらないものではない。
 馬鹿な話をすることも多く、人を笑わせることが好きらしい彼女は、いつも僕に面白い話を聞かせてくれる。
ひょうきんな性格かと思いきや、内面的な話もよくするようで、それとなく深い話もできた。
だから、彼女にだけ相談できる話もあったし、彼女にしか解決できない僕の悩み事も存在した。
それに彼女は言葉をちゃんと選んでくれるし、人を傷つけるようなことは決して言わない。分別をきちんとわきまえている頭の良い人だ。
 最初のうちは、彼女が僕を頼って電話をくれていたが、今となっては僕が彼女を頼って電話を掛けるのも珍しくはなかった。
平日決まった時間帯に掛けてくる電話の回数は増え、休日もよく電話をしては、彼女との会話を楽しんだ。

「そういえば、君は進学するんだろ?もうこの時期になると、毎日電話をするのも難しいんじゃないか?」
「あぁ、良いのよ。そのことだったら気にしないで。私もう志望校には受かってるから」
「へぇ、そうなんだ。僕と同じだね」
「あなたもだったの?何処の大学?」
「それは秘密にしておくよ。君は気にしないと思うけど、君よりレベルの低い大学だったら、君は幻滅するだろう?」
「あら。私、学校で人を見るほど墜ちてないわ」
「ごめんごめん。でも僕が嫌なんだ。あ…、学部だけは教えられる、かな。僕、教育学部志願なんだ」
「そうなの!?じゃあ学校の先生になるのね!」
「あぁ。それを目指してる」
「きっとあなたなら良い先生になれるわ。大学に入ったら、お互いがんばりましょう」
「あぁ」

もう、センター試験直前の季節だった。

 彼女が僕と同い年ということや、彼女の好み、彼女の住所など、今までの会話・携帯電話という媒体を通して知った。
だが、彼女が目指す大学や学部、将来なりたいものなど、彼女は話してくれなかった。
興味本位で聞いてみたときもあったが、彼女は何故かその話題を避け、曖昧に返答する。
僕よりも話術が巧みな彼女に勝てるはずもなく、僕はずっと聞けないでいた。
 そんな時、彼女から一つ提案された。
もう来月からはお互い大学生となって、新たな道へと進んでいく。
だから、この電話の回数も少なくなるだろう。まして、大学へ入るのだから、そうしなければ、学生生活に支障が出る。
お互い目指すものがある。夢がある。そのために、この電話のやりとりは控えるべきだと。
 彼女は僕に迷惑がかかることを極端に嫌がった。僕はそれ以上に、彼女と会話ができなくなることを嫌がった。

「どうして!?どうして分かってくれないの?このままだとあなたに迷惑になってしまうもの!教育学部がどれほど大変なのか、あなたは分かってないんだわ!」
「僕は成績云々よりも、君と会話できなくなる方が苦痛だ!君と話して迷惑に思ったことなど一度もないし、それによって僕が大学生活に支障をきたすようなへまをするとでも思ってるの!?みくびらないでよね!」
「私は…、そんなつもりで言ったんじゃないの。ただあなたの負担になりたくないだけで…」
「もう良いよ!僕と話したくないだけなんだろ!?君の気持ちは解った。もう電話してこなくても良い!さよなら!」

やってしまった。
そう思ったときには遅かった。
彼女の電話を一方的に切って、彼女を傷つけてしまった。
彼女は僕を心配してくれただけだったのに。僕は彼女の想いを煙たがり、終いには突き放してしまった。
 いつもなら「またね」で終わる言葉を、「さよらな」という別れの言葉で終えてしまったことにも、深く後悔した。
彼女が以前言っていた。
「さよなら」だともう会えなくなる気がするから、電話を切るときは「また今度」と言って。と。

 僕らは喧嘩別れをしてしまった。
それも、僕が一人間違った方向へ走ってしまったことで起こった喧嘩。

 それから。
彼女からの電話はかかってこなくなった。
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