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::クリアしたいお題その④・十分の三
恋のはじまりを告げた夏の陽射

01 恋のはじまりを告げた夏の陽射
02 じれったくて、たまらない。
03 シューティングスターハッピー
04 見上げれば、誓った夢
05 青空の未来
06 心を揺らす青春時代
07 愛を嘆く雨
08 誰にもゆずらない未来の道標
09 オレンジ色の記憶
10 いいことがやまない


恋の始まりを告げた夏の陽射 06



 花火大会の帰り道。祭り屋台で食いっぱぐれた夕飯を探しながら、賑やかな残り火を消さない街をぼんやり歩いていた。
 どうもこの辺の気風と自らの気風は合わないらしく、食べたいと感じる店が見あたらない。
胃の中に入れば、どんなものでも満腹になるのだが、好みというものがある。
厄介で贅沢な悩みの種だが、これを譲る気は毛頭ない。
 良い店はないかと、歩き回っているうちに、最寄りの駅から大分遠のいたところまでやってきてしまった。
一度戻ろう。そう、踵を返したときだった。

「今何やってんですか?」

自分よりも、弟よりも幼い青年が話しかけてきた。
空腹で苛つき始めていた時に声を掛けてくるとは、タイミングの悪い青年だ。そう思った。

「俺ら、地元の人間なんですけど、もし良かったら一緒に行きません?」

俺らもちょうど飯食いに行くとこなんスよ。
ありきたりなその台詞に、思わず吹いてしまうところだった。
並んで歩こうとする青年は、自分よりも幾分低い身長だったことにも笑いのツボがある。
もちろん。その笑いはプラスのものではなく、マイナスのものである。
俗に言う、失笑というやつだ。

「あれ。お姉さん何歳ですか?」
「どこから来たんですか?」
「あ。此処で待っててくださいよ。良い店見つけたら連絡するんで、メアドとケー番交換しません?」

よくそんなことがぺらぺら出てくるな。
妙に感心しながら曖昧な返事をする私に痺れを切らしたのか、青年たちは声色を低くする。
笑って終わればいいのだが、ここで笑えば痛い目に遭うのだと言うことが想像できた。
もっと別なことに頭使おうよ。そう言ってやりたかった。

「あっ、何処行ってたんだよ!迷子になるから手ぇ握ってろって言っただろ!」
「んー…あー…ごめんごめん」
「マイペースなのもいい加減にしろよな」
「だからごめんて」

突然現れた登場人物に、青年二人は驚きを隠しきれない。
彼らより幾分も背が高く、幾年も生きてきたその男を見るなり、そそくさと人混みの中に姿を隠していった。
去り際に聞いた舌打ちは、気のせいではないだろう。
 突然現れた男は、大きく息を吐いた。

「なんで追い払わなかったんだ」

オス付きの女と知れば、ナンパしてくる野郎なんて簡単に追い払えるだろ。
半ば諦めの色がある声を発する男は、私の恋人だ。

「いや、なんていうか…若さって良いなぁって」
「はぁ?」
「ナンパなんて、精神的に若くないとできないことじゃない?それに付き合うのも悪くないかなって思ったの。最初はね」
「お前って…結構好い性格してるよなぁ」
「そんな女の恋人やってるのは、どちら様?」
「はぁ…。今度は、離れるなよ」
「分かってるって」

互いの掌と掌を合わせるように、指を絡めさせた。
こうすれば、もう言い寄ってくる男なんて近寄らない。

「…どうした?」
「“恋人繋ぎ”も、若くないとできないなぁって思った」
「若くなくてもできるだろ」

恋人ならば。
言うなり、満足そうに彼は笑みを作った。

そんな、夏の某日。



心を揺らす青春時代
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